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『喪服の男たち』のさわり

 記帳場所としてテントを張った後は花輪の設営だった。おれは黒ネクタイを肩に引っかけ、袖まくりして次々と力仕事を引き受けた。バイトとはいえ、よそよりずっと時給がいいからいつも張り切って動く。「今日のは焼けた死体だ」 社長に声をかけられた。もちろん喪服姿で、でんと突きだした腹をさすりながらタバコをくわえようとしている。「言い方が悪いスよ、社長」「まだ親族は来てないだろ。どうも、例の連続放火の被害者らし...

癌とヒビ

うちのパグ犬、どうも癌ではなかったようです。癌、と診断された後、週一で二度診察を受けまして、その度、腫瘍からにじみだしている汁を顕微鏡で観察する、ということをしてもらっているのですが、診断された時以外の二回とも、肥満細胞腫と判断されるものが見つからなかったとのこと。肥満細胞腫に似た腫瘍で、なんちゃらというのがあるらしいのですが、それみたい。「出てこいや」の獣医さんの話では、はじめに診察した時には炎...

『団地住まい』のさわり

「ふっ、ふっ、ふっ、おれも出すぞ、いいか、出すぞ、うーっ!」 もちろん中に出してやった。外に出した方が楽かと思うんだが、将志は中に出してくれといつもせがむ。使われてる感じがいいのだと言う。 抜いてティッシュで拭いて、タバコに火をつけた。その間に、将志は便所に入っていく。息んでいるのが聞こえた。おれのを出しているのだ。それが終わるとどうするか、もうわかっている。のんびり朝風呂につかるのだあいつは。 ...

さわりのさわり

 海風は冷たく湿っていた。暦は春でもまだ当分気温は上がらない。空はどんよりとして、重々しい雲に覆われている。その下に広がる海はあいかわらず灰色で寒々しい。 手元がかじかんで息を吹きかける。かぎ針で網の手入れを続けてもう三時間。お袋と二人で黙々と手を動かしている。港の漁師小屋の前で、コンクリートに尻餅ついているからケツも冷え切っている。お袋はさすがに座布団を使っているが、手はあかぎれで真っ赤だ。二人...

肥満細胞腫

うちのパグ犬の足に腫瘍ができました。肥満細胞腫。肥満だからなるわけじゃなくて、肥満細胞が腫瘍になったような話みたいで。悪性らしいですが、パグの場合、一気に悪くなって死んじゃう、ということは少ないとネットに書いてありました。今のところ、うちのパグもそれに当てはまるんじゃないか、と勝手に予想しています。右前脚の内側にできたので、すんなり切り取れるものではない。手術をしても取り残しがあると、それをとるの...

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プロフィール

小玉オサム

Author:小玉オサム
ゲイ雑誌各誌に小説を送りつけ続けて、22年。
白髪の目立つ43歳。鼻毛にも白いものを発見! 鼻くその話じゃないよ。

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