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『温泉やくざ』連載しています

「いっぱい出したね」 片山はやたらやさしい顔で微笑んでいた。俺の目をのぞき込むようにして、ヒゲのそり跡濃い顔をまた何度も寄せてきて唇に唇をそっとぶつけてくる。眼鏡に俺の顔の脂がついてちょっと曇っていた。「もうよせよ」「嫌いじゃないだろ」「なんでわかる?」 片山は笑って体をはなした。いつのまにか俺のちんぽをスラックスの中にしまいこんでくれていた。 どうもこいつが相手だと思うようにいかない。 二人で駐...

『牽引療法』

 カチカチと音が鳴って首が吊られていく。椅子から尻が浮き上がりそうなほど持ち上がると、それだけで痛みや痺れが楽になってくる。「気持ちが悪いとか、頭がぼうっとするとか、ありませんか?」 その理学療法士はまだ二十代の若い男だった。首を吊る牽引器具の調整を終えると目の前にしゃがみこみ、私の膝に手をおいて様子を見る。私は首を吊られているのだから、目だけ動かして彼を見下ろした。「いや、大丈夫。気持ちがいいよ...

『父たちの罪と罰』

 柔道場の壁に古い写真がかかっている。 そこに写るのは学生時代の親父と伯父貴の二人で、柔道着姿で畳の上に並んで立っている。親父は体が大きく、そのせいで伯父貴がやけに小さく見える。しかし背の高い親父はどこか鬱屈した表情を浮かべていて猫背だ。反対に、伯父貴は得意げな顔でシャンと背筋をのばし、血気盛んな印象を与える。 写真の二人が見下ろす前で、その息子たちであるオレと従兄弟の弦太もまた、畳の上で、道着姿...

愛と憎しみの水面 中編

…………………………………………………………………………………………「先生はさ、アナルできるの?」 内島は自分の耳を疑った。見上げると、大はあいかわらず尊大とも言える表情をしている。まともに内島の目を見つめ返してきたが、なにか面倒くさそうに目を泳がせた。内島の頭がグルグルと回っていた。「まさか、」 内島のその一言に、大は面倒くさそうな表情を隠さなくなった。がらんどうの室内をぐるりと見回してみせる。その態度こそ、内島に確信させた。「...

『愛と憎しみの水面』雑誌ジーメン八月号

 研究者棟に入ると、大は内島の名前をたよりに教授や准教授の部屋の並ぶ廊下を歩いてまわった。本来、部外者の大だが身咎められることはなかった。医学部にも大勢の学生がいて、ゼミに参加するため廊下を行ったり来たりするのは自然なことだった。セキュリティの必要な研究がされている建物には入口から鍵がかけられていたし、教授たちの部屋も鍵がかかる。内島の研究室にも鍵がかかっていた。しかしドアノブの辺りに柔らかい布が...

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プロフィール

小玉オサム

Author:小玉オサム
ゲイ雑誌各誌に小説を送りつけ続けて、22年。
白髪の目立つ43歳。鼻毛にも白いものを発見! 鼻くその話じゃないよ。

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