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『カーニバル』
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一晩中、ほとんど眠れなかった。好彦と二人、手をつないだままベッドに横たわり、じっとしていた。ときおりカーテンの隙間から窓の外を見た。ホテルの下の通りにも軍人たちがあふれていた。どことどこが戦っているのかよくわからない。好彦は日本から持ち込んだラップトップコンピューターをネットに接続し、情報を集めていた。
「どうも、反政府ゲリラと政府軍が戦ってるみたいだ」
「今、外にいるのはどっちなんだ?」
「わからないよ」
とても本当のこととは思えなかった。まるでテレビの中での出来事だ。自分がこんなことに巻き込まれるなんて信じられない。朝になって、一晩中つけっぱなしにしてあったテレビで英語のニュースが流れだした。どうやら反政府軍がクーデターを起こし、都市の主要な設備を占拠したらしい。俺は好彦に事情を説明して、顔を見合わせた。
「兄貴、腹減らないか?」
「お前、こんな時だぞ」
「だけどずっとこの部屋にこもってるわけにもいかないだろ」
とりあえず様子を見にロビーまで降りていくことにした。エレベーターが開いたとたん、すぐ目の前に軍服姿の男たちがずらりと並んでいた。俺は鳥肌をたてた。好彦を見ると、なぜかにやけている。制服姿の男だからか? 馬鹿な奴、と思った次の瞬間だった。男たちが現地の言葉でなにやら話しかけながら好彦の腕をつかんだのだ。それはアッという間の出来事だった。俺は何事かと好彦に手を伸ばそうとした。そのとたん、横にいた軍人に頭を殴られて気絶した。
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ゲイ・カーニバルに浮かれた遠い異国の都市にやってきた若い日本人カップル。男同士手をつないでも誰にもとがめられない開放感を楽しんでいた二人だが、反政府ゲリラによるクーデターに巻き込まれてしまう。
初出『バディ』。「ドラマチック小玉劇場」シリーズとして発表された第一作目。シリーズといっても続き物ではありません。バラバラに読んでも問題ありません。
『キャンプ』
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良信と出会ったのはうちの雑誌がやっているイベント会場でだった。それはチャリティをかねたバーベキュー大会で、多摩川の河原でおこなわれた。汚れの目立ちそうなベージュのズボンに白いシャツを着た良信は、そこではとくに目立っていた。なにしろ他に集まっているのはみんなキャンプ大好きな連中で、見た目より汚れや寒さに強いようなアウトドアウエアを着込んでいるのだ。色白で少しもたくましさを感じさせないかわいい顔立ちもかなり浮いていた。誰だろう?とおれも不思議に思ったのだ。すると編集長が良信の肩を抱いて近寄ってきて紹介してくれたのだ。
「おい、これな、うちの息子の良信だ」
「え、編集長の?」
うちの編集長というのがまた、いかつくて体もでかくて、アウトドア雑誌の編集長にふさわしい髭のおっさんなのだ。その息子がこれかと思うとまた不思議だった。
「こんなとこにくるのは嫌だったんです」
良信はかわいい顔をにっこり笑わせて手を差し出してきた。おれは手を握りながら首を傾げた。
「え?」
「だって、アウトドアが好きな人たちの集まりでしょ? つまり、自分勝手な人間の集まりってことですよね」
「え、なに言ってんだ?」
これが良信の毒舌を聞いた最初だった。
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アウトドア大好きの兄貴肌と色白インテリ派のちくはぐカップル。いまいち話はあわないがうまくいっていた。ひねくれ者の年下恋男の言動にうんざりするアウトドア兄貴だが、年下男の毒舌には理由があった。彼には入院中の弟がいて……。
初出『バディ』。「ドラマチック小玉劇場」シリーズとして発表された第二作目。シリーズといっても続き物ではありません。バラバラに読んでも問題ありません。
ツイッターでものせたんですが、先日、彼氏が買ってくれました。
さっそくケース作成。羊製。
以前、書いたと思いますが、
この二年近く、iPadで原稿書きをしていたんですが、
iPadって日本語の変換能力がほんとアホ。
二十年前のウインドウズ標準のIME(って言うんでしたっけ?)に
大きく劣っている。
そもそもそういうマシンじゃないよ~、
と言われればその通りなわけですし、
その他の点ではすばらしいデバイスなんですけどね。
で、ここのところ、Windows8.1のタブレットが熱い、
という話が聞こえてきて、
今年中くらいには買い換えてもいいかな、
と考えていたんです。
で、どんな感じなのか実物を触ってみたくて、
量販店に出かけていったら、
彼氏がいきなり「買ってやる」と。
何万円もするもの買ってもらったことないし、
戸惑ったというか、
あわてたんですが、
やっぱり買ってもらっちゃった……。
はやめの誕生日プレゼントという形です。
毎年、誕生日は互いに食事をおごる、
というような形式ができあがっていたんですが、
誕生日会はなしでかわりにタブレット。
あ、写真で見ると普通のノートパソコンに見えるんですが、
これ、本来はタブレットで、
キーボードのドックがついてくる、というもの。
分離するのです。
もっとも、まだiPadと両方使っている状態なので、
こちらはずっとキーボードつけっぱなしですが。
とにかくありがたい話というわけでした。
ありがとうございます、彼氏さま。
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