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滝のように汗が流れていた。
空はどんよりと曇っていて温度はさほど高くないが、ジメジメと空気は湿り風はまるでない。風通しのいいとは言えない作業服で小一時間、一人きりで看板の取り付けをしている間に、小峯慎平は全身汗だくになっていた。顔に吹き出た汗を袖で拭うが、何度もこすっているから半袖はじっとりと濡れ、顔の脂も吸ってヌタヌタだ。
こんなことがしたくて帰ってきたんじゃない。
つらい仕事、面倒なことが重なると、慎平はいつも口の中でつぶやいている。普段、家族や同僚、幼なじみたちに愚痴はこぼさない。全部、自分の中に抱え込む。そういう性格のせいもあるのかな?とも思う。ああいうことが好きになったのは、いや、好きになったというよりも、ああいうことを求めずにいられなくなったのは……。
慎平がいるのは県内でも随一の巨大団地の中だ。取り付けている看板には犬と猫のイラストが描かれていて、「僕たちここには住めません」と下に書いてある。アスファルトで固められた道路の端にツルハシで穴を開け、支柱を立てて固定していく。一人でやるにはそれだけでも重労働に思えるが、会社からここまでの道のりがまた長かった。県内全域をカバーしている看板屋だから、ポスター一枚貼るために片道四時間などということがザラなのだった。
「おい、慎平!」
いきなり声をかけられてギョッとした。見ると、幼なじみの内野勝がすぐそばに立っていた。スラックスに半袖のワイシャツを着てネクタイを締めているが、顔中に汗を吹き出させている。
「こんなとこで何やってんだ?」
「もちろん仕事だよ」
「営業か」
内野はカーディーラーに勤めている。営業マン向きの明るい性格で、いかにも田舎者らしい素朴な顔つきとがっちりとたくましい体格が慎平の好みにあっていた。というより、この内野と育ったからこそ、慎平の好みも決まったと言える。もちろん慎平の性癖を内野は知らず、自分がどういう目で見られているのか想像したこともない。
「しかし暑いよなあ……」
内野もワイシャツの袖で顔を拭いた。脇を持ち上げたせいで汗の匂いが慎平の鼻先まで流れてくる。反射的に慎平は鼻腔を膨らませ、幼なじみの体臭を吸い込んだ。いつもの妄想が慎平を落ち着かない気持ちにさせていた。
こいつと自分の着てるもの取り替えたらどんなだろう……。
もう十年、中学生の頃から蒸し暑い時期がくる度に、この妄想を繰り返している。内野の汗と体臭の染みたシャツやパンツを自分が着たら……。じっとりと濡れた熱い下着が肌に張りつくところを想像しては、慎平はうっとりとした気分でかたくいきり勃たせてしまう。さりげなく目を落として、作業ズボンの前が目立っていないか確かめた。
現在発売中のSM-Z夏の号に僕の小説がのってます。
田舎町に住む普通の若者(M)のリアル系のお話。
よかったらどうぞ。
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