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『サーフィン』
♦ ♦ ♦
「今度、一緒に島に行こうよ、考さんもさ」
巨大なボードの間を歩きながら、和志は笑いかけてくる。どこまで本気で言っているのかわからないが、俺は軽く答えてやる。
「ちゃんとガイドしてくれるんならな。俺は英語ぜんぜんだから。あ、ただし、サーフィン教えようなんて考えるなよ」
「なんだ面白いのに。でもまあいいよ。オレのかっこいいとこ見せてやれるだけでもさ」
「自分で言うな」
こんなやりとりが最高に楽しいのだ。だけどやっぱり時間が気になった。はやくしないとアパートに連れていく時間がなくなる。俺は和志の体に触りたくて仕方がなかった。
アパートにつくと有無を言わさず裸にしてやった。和志は少し照れているが、俺の欲求には素直に従ってくれる。求められることもうれしいのだろう。それに体自慢の若い奴なのだから、俺に見せていい気分なのは間違いない。脱がせていく最中から和志は勃起していた。俺はニヤニヤしながら太ももを撫でた。そういえばもう日焼けが落ちてきているようだ。そうは思ったが、口には出さないでいた。しかし顔には出たらしい。
「もう日焼けがとれちゃってさ。オレって体質的に日焼けがすぐに落ちちゃうんだ。また白くなっちゃうよ」
和志はつまらなそうにこぼしていた。たしかによく日に焼けた和志は海の男といった雰囲気でたくましい。しかし服をはいでいく時、色白な肌があらわになる瞬間ほど、俺の心を締めつけるものはないのだ。
「色白だってセクシーだぞ?」
「でも、オレってサーファーなんだよ?」
思わず噴き出してしまった。和志はムッとして俺をにらむ。俺はそんな奴の顔を両手で挟んでキスしてやった。小さなことに一喜一憂する、若いこいつが愛しいのだ。
♦ ♦ ♦
競馬場そばの立ち飲み屋の店主三十四歳が主人公。プロサーファーを目指す二十歳の若い男と出会い、惚れ込むが、年の差、考え方の違いが距離を生む……。ごついおっさんと若いサーファーの恋。
初出『バディ』。「せつない話」シリーズ第一作。シリーズものですが読み切り短編です。
先週は無料キャンペーンありがとうございました。
これを入り口に新たな読者さまが一人でも増えてくれたらいいんですが……。
今回の「サーフィン」はちょっとだけ曰く付きであります。
もともとは別の雑誌用に書いていて、読んでもらったら
なぜか気に入ってもらえなかった。
自分としてはかなり自信のある内容が書けたと思っていたから
がっかりというか、好みがちがうんだな~、
と感慨深くも思いました。
で、そのままお蔵入りさせるのはいやだったので
事情を話した上でバディさまに拾っていただいたのでした。
バディのルールにしたがって少し直しましたけどね。
僕の他の小説でいうと、
「学生旅行」とか「マンディ」とかと通じている雰囲気の話です。
おじさんと若者の恋愛話。
といっても、若い男視点から描いた二作品とは反対に、
この「サーフィン」はおじさん視点なんですが、
近いなと自分では思ってます。
「おじさん」といっても三十代のまだ前半の男が主人公です。
考えてみると、このおじさん主人公、
今の自分より十歳くらい年下なわけで、
「まだまだぜんぜんおじさんじゃないじゃん!」
「三十代はまるっきり青年だよな……」と
思ったりもしますが……。
とにかく自分としてはとくに気に入っている作品の一つなので、
よかったらどうぞ。
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