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研究者棟に入ると、大は内島の名前をたよりに教授や准教授の部屋の並ぶ廊下を歩いてまわった。本来、部外者の大だが身咎められることはなかった。医学部にも大勢の学生がいて、ゼミに参加するため廊下を行ったり来たりするのは自然なことだった。セキュリティの必要な研究がされている建物には入口から鍵がかけられていたし、教授たちの部屋も鍵がかかる。内島の研究室にも鍵がかかっていた。しかしドアノブの辺りに柔らかい布が引っかかっていて、鍵はしっかりおりていなかった。
「あの、すいません?」
大は布を引いた。それは上等なマフラーで、軽く引いただけで鍵のはずれる音がした。ドアを開くと、左右の壁が天井までの書棚になっている狭い部屋が見えた。窓を背にして重厚な木製机がかまえているが、そこには誰もいない。
やっぱり電話くらいしてからくればよかった。
大はがっかりしながらすぐにドアを閉めようとした。その時、部屋の奥からひとの声がした。大はあらためて狭い研究室を見回した。右側の壁だけ書棚の奥にドアがついていて、となりの部屋とつながっているらしい。廊下から見ると、となりの部屋のドアには使用者のパネルがついていなかった。一人で二部屋使っているのかもしれない。
「……男らしい体だ」
書棚の奥のドアから聞こえていた。大は無邪気に内島の研究室に入り込み、奥のドアをノックしようとした。その時、男の押し殺した喘ぎ声が聞こえてきた。
「う、あ、先生……、」
「いつも感心するよ。君の体は本当に敏感にできている」
どういうやりとりなのか大には見当もつかなかった。しかし大は本能的に息を詰めた。二人の男の囁きあう声。熱い吐息。
「こうして年上の男に可愛がられるためにできている体だ」
内島のしわがれた低い声に大はゾクゾクと背筋を震わせた。まさか、と思いながら、確かめずにいられなかった。大はそっとドアノブをつかみ、音がしないように慎重にまわした。そしてほんの一センチばかりできた隙間からとなりの部屋を覗きこんだ。
となりの部屋もつくりは同じだった。しかし机のかわりに革のソファが置かれていて、そこに二人の男が横たわっていた。下になっているのは大と同年代の若い男で、その上に内島らしき年配の男が覆いかぶさっている。若い男はほとんど裸にされていて、その健康的な肌の色に内島のスーツのダークグレーが重なっている。内島は若い男の乳首に尖らせた舌先をこすりつけ、肛門に指を差し入れていた。
大は息を飲んだ。
発売したばかりのジーメン八月号にのってます。
タイトルは『愛と憎しみの水面』。
三回連載の予定です。
隔月で掲載されるはずなので、次は十月号です。
久々(?)の長めの連載。
編集長さまからいろいろご提案いただいたアイデアから書いてます。
まるっきり自分一人の頭の中で一から作る話と、
編集さまからモチーフなりテーマなり与えられて書く話って、
いろいろ違ってきて面白い。
結局は小玉テイストになっちゃうわけですが、
一歩引いた視点から描けるというか。
自分のアイデアだけじゃこうは書かないな、というものが書ける。
ちなみにSM-Z(残念ながら不定期刊行になってしまった……)で
書いた話は、大部分、編集さまの指示をいただいて書いた小説です。
アイデアをいただいて、筋を作って、さらに指示をいただいて
本番、という運びが多かった。
僕の中のSM像とプロのSM観ってかなり違っていたので、
勉強になりました。
たとえば、僕はMに思う存分感じて震えて欲しいわけですが、
Z編集長さまによると、
「すぐに感じちゃうのは萎える」
「Mとして解放されちゃうのはダメ」
「いっそ勃起させなくてもよい」
そういう哲学があるらしく。
S役でも人間的弱さがあったり、立場の逆転があったり、
そういうものを僕は考えがちなんですが、
「SがMをしゃぶったりするのはあまり好ましくない」
「SはやっぱりSらしく」
とのこと。
もちろんすべて編集サイドに言われるがまま書けるわけもなく、
せめぎ合いのようなもの(そんなたいそうなものでもないけど)もあるので、
できあがる小説は、良かれ悪しかれ、僕の作品そのものですが、
編集さまとの共同作業なくしては決してできなかったお話ばかり。
あー、はやく復帰しないかな、SM-Z。
とりあえずジーメンがもっともっと盛り上がれば
景気が良くなってくるんでしょうから、
みなさん、ジーメン買ってくださいね。
ヨドバシ.comでも送料無料で買えるようになったらしいですし。
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