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『彼氏は旅人』『故郷』配信開始とpixivでの試し読み





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故郷 (旅)故郷 (旅)
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『彼氏は恋人』

♦ ♦ ♦

 毎晩のように、僕たちはお酒を飲んだ。たいした量じゃないが、ワインをあけて、雰囲気のいい音楽をかけ、ろうそくに火を灯しロマンチックな関係を楽しんだ。彼の口からはやはりよく旅の話が出た。当然のように、彼は僕をたびたび旅行に誘った。僕は笑顔でうなずいていた。
「……いいね、行きたいなあ」
「じゃあ、どこにする?」
「君が今まで行った中で、一番素敵だと思った場所はどこ?」
「一番ってところはないな。そういう考え方、しないんだ」
「じゃあ、どこか行きたいところは?」
「だったら答えは決まってる。今まで一度も行ったことのない場所」
 洋太は遠い目をしていた。すでに旅先への想いに焦がれているようだった。行ったことのない場所が旅先。ロマンのある男だな、と僕はまた彼のことが好きになる。いつもなら、そんなところで話はまとまってしまうはずだった。
 だがある時、彼はその先の話を始めた。
「……で、いつからにする?」
「え?」
「チケットによるけど、うまくいけばあさって出発のが予約できるかもしれない」
 唐突に現実的な話になっていた。僕は戸惑っていた。
「あさっては無理だよ、いくらなんでもね。でも行くとしたら、どのくらいの期間を考えてるんだい?」
「最低三週間」
「僕はそんなに行けないよ。わかるだろ、仕事があるんだ」
「だから途中で帰ればいいさ。それか、オレが先に行って、後からくればいい」
 彼はなんでもないことのように話していた。僕は笑って首を横に振っていた。
「それだったら嫌だよ」
「どうして?」
「さびしいじゃないか、一人で飛行機に乗るなんて」
「だって旅に出るんだぜ。そのくらいのこと気にしててどうするんだよ」
「僕は、そうまでして旅行に行きたいとは思わないのさ」
「じゃあ、どのくらいだったら休みがとれるの?」
「せいぜい、一週間だな。土曜日出発か金曜の夜に出発で、次の週末には帰ってくる、ただし、土曜の夜までにね。一日休んでからじゃないと、仕事に差し支えるから」
 僕は真面目にしゃべっていたのだ。それなのに、彼は肩をすくめていた。馬鹿馬鹿しい話、と言いたげに肩をすくめていた。軽蔑しているとしか思えない目つきで僕を見ていた。

     ♦ ♦ ♦

 三十代前半のサラリーマンが主人公。十歳若い男と知り合って恋をする。彼氏は半年働いて半年旅をするという生活を送っている。ロマンを語る彼はワイルドでかっこいい。しかし生活環境や考え方、十歳という年の差が二人の間に溝を作ってしまう……。
 初出『バディ』。「旅」シリーズ第五作。続き物ではありません。読み切り短編。






『故郷』

     ♦ ♦ ♦

 さっき別れ際、みんなに、村を出て行くという話をした。まんじゅう屋のおばさんは驚いていたし、さびしいと言ってくれたけれど、親戚はただうなずくだけだった。オレはずっと親戚のやっている旅館を手伝っていたけれど、元々、オレがいなくたって困らないところだったのだ。オレはばあちゃんの面倒をみないといけなかったから、人情で仕事をくれていただけ。だからばあちゃんがいなくなれば、オレがこの村にいる理由は何もない。
 宿ではお客さんの荷物を運んだり、村の中を案内したりしていた。帰りには駅まで見送りに行った。その、いつも見送ってばかりいた列車にのって、このオレが村を後にする。人もまばらな列車の中で、車窓に流れる景色を眺めた。もう再び見ることもないかもしれない、故郷の景色。生まれて初めて、帰ってくるかどうかわからない旅に出るのだ。行くあてもないし、不安でいっぱいだけれど、これが自由ってものなんだろう。ばあちゃんが死んで悲しいのに、オレは解放されたと感じていた。どこに行ってもいいし、何をしてもいい。こんな自由は今まで一度も味わったことがなかった。

     ♦ ♦ ♦

 一度関係を持った男をあてにして田舎の温泉町から都会に出てきた若い主人公。しかし男は約束の場所にあらわれず、また別の男をたよりにするが……。
 初出『バディ』。「旅」シリーズ第六作で最終話。続き物ではありませんが、「旅」シリーズ第一作『いなかの男の子』http://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B00IODI958の後日談となります。読み切り短編。






「pixiv」ってご存じでしょうか?

ツイッターから飛んで見に行ったことはあったんですが、
あれは絵とか漫画を投稿するところ、という意識でした。

それが、先日、BL小説家さんと漫画家さん(お二人ともBL専業ではない)
とお近づきになれまして、
pixivは小説も投稿できるという情報をいただきました。

僕と同じくアマゾンkdpで小説を売り出している方々の中にも、
大勢、pixivを利用してらっしゃるとのこと。

たとえばお試し版として小説の抜粋をpixivにのせておいて、
「興味をもたれたらこちらへ」とアマゾンへのリンクを貼っておく。
そんな使い方もあるのか!と興奮して、
さっそく、お試し版を僕ものせてみました。


[pixiv] 「穴極道(お試し版)」/「小玉オサム」

[pixiv] 「警察官(お試し版)」/「小玉オサム」



やっぱり無料のせいか読んでくださる方は多いみたいです。
いまのところ、そこからアマゾンで完全版を買ってくれる
という流れにはなってませんが……。
(タダと有料の間には深くて暗い深淵が横たわっている)

でも、そこを入り口に新しい読者さんが出てくるかもしれないので、
今後もいろいろアップしていこうと思います。


(ちなみにアマゾンkdpは作品の10パーセントまでは他サイトでの無料発表を認めています)









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プロフィール

小玉オサム

Author:小玉オサム
ゲイ雑誌各誌に小説を送りつけ続けて、22年。
白髪の目立つ43歳。鼻毛にも白いものを発見! 鼻くその話じゃないよ。

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