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『白黒』
♦ ♦ ♦
カーン、カーン、ダダダダダ。
カーン、カーン、ダダダダダ。
「オーライ、オーライ……」
「昨日母ちゃんがなあ……」
「ちゃんと持てよ、ちゃんと!」
男達の汗の匂い。男達の体臭。
男は足場を組み立てるために、両腕を上げパイプを支えていた。そんな時、ふいに奴の声が聞こえてきた。はっとして振り返ると、奴はそう遠くないところで監督と話をしていた。奴は腰のタオルで顔と首筋に流れる汗をごしごしと拭いとりながら、監督の愚痴を聞いてやっていた。奴は体に力を入れ、太い足を踏張らせ、監督の話を熱心に聞き、いちいち首を振って答えていた。ものすごく人のいい男だった。逞しい男、がっしりと体のでかい男、男らしい笑顔見せる陽気な男。その黒く太い腕や力強い腿にはびっしりと男らしい剛毛が生え揃っているのを、男は更衣用のプレハブでいつも眩しそうに目を細くして見つめていた。顎にはいつも同じところに剃り残しがあり、その髭の濃さも男らしかった。奴の体からはいつも汗の匂いがした。男の汗の匂いがした。
♦ ♦ ♦
小玉オサムデビュー作。
初出は野郎系ゲイ雑誌『さぶ』(すでに廃刊)。1991年だったと思います。
アート系ホモ土方小説につき、濡れ場はほぼありません。
一種の実験小説であり、ホモポエム、ホモ哀歌、ホモの残酷物語な風味なので、物好きな方だけどうぞ。
初の単行本『NIGHT AND DAY』発売記念として恥をさらします……。
上にあるとおり単行本発売記念で
デビュー作を配信することにしました。
かなり恥ずかしい内容。
もうほとんどポエム……。
よくこれを掲載してくれたな、と思います。
当時の『さぶ』編集長様に感謝(天を仰いで)。
初めて書いたゲイ官能小説がこうしてすんなり発表できたおかげで
その後があったのだと思います。
これがダメだったら「やっぱ無理か」と次は書かなかったかもしれない。
内容ははじめから最後まで暗いです。
今回、あまりにもひどいところだけ手を入れましたが、
あんまり直しちゃうとそれもズルいかな、
とも考えて、ほとんど発表当時のままになってます。
(単にめんどくさかったとも言う)
本日18日の夕方、おそらく四時前後から一日限定ですが
無料キャンペーンやってます。
実用的でない(抜くのが難しい……と思う)内容なので、
興味のある方は無料の内にどうぞ。
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始まりのシーンから現場、飲み屋のカウンターなどどこの情景も浮かび上がってきて、男の感情にえらい揺さぶられながら読みました。
最後、相手の男は今後いったいどう生きていくのかちょっと興味がそそられました。
そしてこれが処女作ということにびっくり。色気たっぷりでした。どっちの男も魅力的です。